競売 公売 ときどき断行(強制執行)

不動産の競売や公売のあれこれ たまに強制執行について話します

不動産競売の基礎知識

今回は文字だらけです。すみません。

 

前回は、いきなりプチ物件調査(役所調査をはぶいているので)のことを書いちゃいました。競売に詳しくない人だとピンとこないところがあったかもしれません。そもそもフツーの人はいったいどのくらい知っているもんなんでしょう?

 

まあ不動産ですら、不動産屋にでもならないかぎり、あまり専門知識は必要ないですもんねw 自分が知っているから、他人も知ってると思い込んで書き続けてもいいんですが(どーせヒマつぶし自己満ブログなんで)、ひととおり基礎知識みたいなもの解説しておこうと思います。

 

一昔前と違って、競売に関する書籍もずいぶん多くなりましたが、「あなた何回入札落札したことあんの?」って問い詰めたくなるくらい、へーキでウソを書いている本すらありますから。ちょっと前に書いたマジメな小冊子用文書の改編なので、固めの文章なのはご了承くださいm(_ _)m

 

 不動産競売の基礎知識

あまりピンとこないかもしれませんが、競売物件に入札・落札することは、お金を払って裁判所の扱う競売事件の当事者になるということです。お金払ってわざわざ事件の当事者になろうってんですから、物好きですよねえ(^_^)

 

で、すべての事件は裁判所では、個々に事件番号を付けられます。競売事件なら、東京地裁本庁令和5年(ケ)12345号とか、東京地裁立川支部令和5年(ヌ)12345号などなど。最初から順に、

  • 管轄の裁判所
  • 申立の年度
  • ( )内は符号
  • 申立順の番号と決まっています。

テレビなどでは競売を「きょうばい」と読んでいますが、裁判所では「けいばい」といいます。不動産屋も「けいばい」ですね。

 

 競売事件には、担保不動産競売事件と強制競売事件、そしてごくまれですが形式競売事件の3種類があります。

 

①担保不動産競売事件

いちばんよくある競売です。不動産に設定された担保権(主に抵当権)を実行するため不動産を差押えて売却する手続で、事件番号の符号は(ケ)と表示されます。不動産の購入時にローンを組んだけど、それが返済不能で競売に……というのが一般的なケースです。ただし商売上の運転資金や根抵当などで金融機関に融資を受ける際に抵当権を付ける場合もあり、その場合などは、土地の一部が競売から漏れているなどのケースがみうけられたりします(実際、私はそういう物件落札したことがあります)。誰が担保権者なのか登記簿の確認は必須です。

 

②強制競売事件

借金返せや!って裁判に訴えて、不動産を差押えた場合がこれ。判決や裁判所での和解、調停で決まった内容を実現したり、公証人が作成した公正証書(執行文認諾条項付き公正証書など)の内容を実現するため不動産を差押え売却する手続で、事件番号の符号は(ヌ)と表示されます。

 

③形式競売事件

遺産分割、共有物分割、破産手続上などで、不動産を売却してお金に換える必要があるときに競売手続を利用するものです。事件番号の符号はその性質に応じ(ヌ)又は(ケ)と表示されます。実務上はほとんどが(ケ)です。

 

いずれの競売事件も売却手続自体は同じです。

 

こんなかで、要注意なのは(ヌ)の強制競売事件。わざわざ裁判を起こして差押え競売にかけた債権者と、それでもお金を払わなかった債務者がいる(かもしれない)、まさに「競売事件」なのです。(ヌ)の事件は売却基準価額がかなーり安めなため注目されがちですが、落札によって更に揉めるケースや持分だけの売却なども多く、競売初級者は避けたほうがいいかもしれません。ていうか、避けましょうw

 

これ以外でも安すぎる物件には注意です!
競売物件みていると、ときどき1万円とか2万円とか、数十万円のマンションなんかがあります。「安~い!」って飛びつくのは厳禁ですよ!! そもそもマンションの場合は区分所有法で、滞納管理費・修繕積立金・遅延損害金は、競売の買受人に支払い義務が。ついでに、弁護士費用なんかも支払う必要があるケースもあります。

さらに安すぎる戸建ての建物にも注意が必要です。土地の利用権がないって場合や、最悪の場合は更地(建物収去土地明渡)にして地主に返さなきゃいけないって物件もゴロゴロあります。返還単独で利用できない持分割合のみ売却の場合は、おもしろかったりするんですけどね。

 

競売のメリットとリスク

競売の最大のメリットは安く買えること、これが以外にあまりありませんw 業者も一般消費者も、同じ土俵で公正なシステムで競り合うことも利点ではあります。

 

逆に競売ならではのリスクは数多く存在します。

明け渡されるまで内覧できない。物件調査を短期間で終わらせなくてはならない。明け渡しのトラブル等々……。買受け後のトラブルは、民法その他の法律にもとづき当事者間で解決するしかありません。裁判所は仲介責任を負いません。契約不適合責任もありません。リスクはほぼ自己責任です。まあ、解決までの道のりを面白がれると、これ以上ない娯楽だったりします。ドキドキしますからw

 

競売物件と通常の不動産取引と比べて、以下のような違いがあります。
① 建物内部の確認をすることがむずかしい。内覧制度もあることはあるが、現実にはほとんど実施されていません。
② スムーズな物件の引渡しが保障されていない。場合によっては、何らかの利益を意図した「占有屋」と呼ばれる人々が占拠しているケースもあります。特に一都三県で空き家の競売物件を狙う場合は「タ○ハシ」って占有屋に注意ですw 一度捕まって刑務所に入ったハズですが、1-2年前に出所したみたいで絶賛活動中です🤣

③ 鍵の受渡し等について裁判所は仲介してくれません。物件の元所有者や占有者は自分の物件を強制的に売却された人たち。引渡命令、訴訟など法的手段が必要なケースも多くあります。
④ 売却残代金を早期に納付しなければならない。売却許可決定後約1か月ほどです。
⑤ 契約不適合責任はありません。物件に何らかの欠陥があっても、売却の取消しや損害賠償請求ができないケースが多く、できたとしても訴訟等が必要となるなど困難です。

 

競売手続の概略
                                        
競売手続は厳密にいうと、不動産に競売開始決定の差押登記で始まります。

そうはいっても、買受希望者にとっての競売は、期間入札の公告がなされて、同時に3点セットの閲覧が可能になったところがスタートです。

3点セットは各管轄地裁で閲覧できるほか、執行裁判所の公式サイトである不動産競売情報サイト(http://bit.sikkou.jp/)のほか、不動産競売流通協会(FKR)運営のサイト(http://981.jp/)でも閲覧が可能です。

BIT 不動産競売物件情報サイト

競売不動産検索サイト!981.jp

個人的には、掲載が半日程度遅いという欠点を除けば、981.jpのほうが各種検索機能が充実して使いやすいです。

 

期間入札と特別売却

 

競売物件の売却方法には、期間入札と特別売却の2つの方法があります。通常は期間入札の公告に、特別売却の期日も併記されています。

①期間入札 一定期間中に入札を受け付け、開札期日に開札。その結果、買受可能価額(売却基準価額の8割)以上で、もっとも高い金額で入札した人を最高価買受申出人に指定して売却許可決定を受ける資格を付与する方法です。

ようするに一番高い値段をつければ落札者になれます。入札書に金額を書いておこなうオークションだと思えばいいです。入札の際は買受申出保証金(通常、売却基準価額の2割)を納める必要があります。

 

②特別売却 期間入札の結果、適法な入札者がいなかった事件が対象です。特別売却期間内にもっとも早く買受可能価額(期間入札のときと同一価額)以上の額で、適法な買受けの申出をした人が売却許可決定を受ける(落札者となる)方法です。

特別売却のスタート時間に複数の買受希望者がいた場合どうなるかって? 抽選とかじゃありません(ちょっと前まで、「特別売却は抽選」ってウソ書いていた本がありましたw)。その場で入札書を書いて提出し、もっとも高い価額で入札した人が落札できます。買受申出保証金は、窓口まで持参する必要があります。

 

なお期間入札の入札書類は郵送もOK! ですが信書便だけという法律上の制限があります。郵便局のレターパックは○ですが、メール便はダメです。